「ポワゾン」
●とことんつき合いたい悪女、映画ならばこそ!

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アンジーこと、アンジェリーナ・ジョリーの魅惑にハマっている方は多いことだろう。ブラピもまたぞっこん、メディアはふたりを称してブランジェリーナという造語すら命名したくらいだ。
かくいう筆者も眼を切らないでアンジーの動向には魅き寄せられる。

そのきっかけとなったのが「ポワゾン」(2001)。ずいぶん前のような気もしたがほんの7年前、アンジーはまだ26歳。若き日の必見の代表作と筆者は信じて疑わない。

その理由の最大はアンジーに違いないのだが、いまひとつこの原作となったウィリアム・アイリッシュの『暗闇へのワルツ』は既に映画化があって、それがフランソワ・トリュフォーの「暗くなるまでこの恋を」('69)であること。

この作品トリュフォーのフィルモグラフィーの内では不当に無視されることも多いのだが、実にトリュフォーの愛の、純粋なカタチを優れて成功させた作品と筆者は観ていて、表層的な「夜霧の恋人たち」('68)哀しみに充ちた「恋のエチュード」('71)よりも、好みにして成功作なのである。 

カトリーヌ・ドヌーヴ+ジャン・ポール・ベルモンドに代わるアントニオ・バンデラス+アンジーは? ということで駆けつけたんですね。
監督のマイケル・クリストファー、アンジーの出世作と言われるTVM「ジーア/悲劇のスーパーモデル 」('98)でもそのメガホンを撮り、アンジーを知悉している、そのことが見事に生きています。

ポワゾン01.jpg映画は牢獄のヒロイン、その牢越しにとらえられるアンジーのいかにも猥雑で、もの欲しげ、いわば品の悪いその最大の魅力を刻印して始まります。あざといほどの下唇の真ん中に見事に彫られたようにある縦線、もうこれだけでこの演出に相当な信頼を寄せてしまったほどです。
このヒロイン、育ちの悪さでは、なかなかふつうに生きていては経験できないどころか、挫けてしまうような境涯を過ごしてきた女で、それだけにすさまじいほどのバイタリティも鍛えられてきているのです。

舞台はキューバですから、ラテン系の音楽がしっかり奏でられていますが、まさしくそんなバイタリティにふさわしき舞台装置と言えます。
育ちの悪い女と御曹司、またこの逆に深窓の令嬢と育ちの悪い男、これは映画の歴史の中で実は定番の組み合わせで、現実を超える真実が、そこで明らかにされるわけです。(「哀愁」もそうですし、「陽のあたる場所」も、そうです)

原題はORIGINAL SIN、原罪、とでも訳せばいいのでしょうか。人間のもとよりある嗜好、とでも云った方がもっと明らか、かもしれません。
つまりは悪女も人間、その拠って来たる所があるわけです。その品のよくない魅惑の根源、アンジーが見事に演じています。

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ポワゾン」ORIGINAL SIN(2001/116分/米)
監督&脚本:マイケル・クリストファー
撮影:ロドリゴ・プリエト
音楽:テレンス・ブランチャード
出演:アントニオ・バンデラス、アンジェリーナ・ジョリー、ジョーン・ブリングル、アリソン・マッキー、トーマス・ジェーン

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posted by 映画貴族ニャン at 17:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス>ポワゾン

「ペーパー・チェイス」
●人生予備軍としてのアカデミズムへの闘い!


教授 リンゼイ・ワグナー

青春時代とは、所詮人生予備軍、遂には人生のレギュラーとして、勝敗のめどもつかぬ闘いにいまだ参戦せず、というところもあって、それが故にこそアナーキーな雄叫びも反抗も、後先の見返りも求めず、突き進んで行けるものでもあるだろう。

だがしかし、この青春映画はいささか勝手が違う。ペーパーとは答案用紙、正解との追いかけっこ、カーチェイスのようには派手でもなく、恰好も良くない辛気臭さ。
ペーパー・チェイス、実は単位を取る人生予備軍の闘いなのである。

教授に名指しされるたびに緊張が走る。
「ハートくん!」
そう幾度も呼びながらプロフェッサーはいっかなその名を覚えようともせず、
「ところで、君の名は?」

ティモシー・ボトムズ確かに抵抗も反抗もしてみた。
「先生はクソだ!」と、言ってみもした。
教授に背を向け、教室を立ち去ろうとさえ試みてはいる。
だがしかし、「ハートくん!席に戻りたまえ!」
その電撃のようなひとことに、たちまち萎縮し言いなりのロボットとなるハートくん。

教授2ハートくんには恋人がいて、知らずにつき合っていたけれども、実はその教授の娘、別居中の夫すらいる。
教授に扮するのがジョン・ハウスマン(ヘンリー・フォンダの舞台仲間にして友人、貫禄の名演である)ハートくんはティモシー・ボトムズ(いかにもいまだ座標軸を持ち得ずの過度期としてのキャラクターを好演)そして恋人がリンゼイ・ワグナー(この作品の後、バイオニック・ウーマンとして、走れマックス!の掛け声とともに盛名を馳せる)

教授とハートくん実にそんな逆三角の二等辺三角形のどんづまりに、いまひとつ居心地もすっきりとしないハートくんだが、6人で始めた勉強会についていけず、最後の方では脱落して3人となるその中に残るのだから充分に優等生なのである。
なにしろハーバードの法科ということである。ロウスクールといったって、Lowではなく、Lawなのだから。

青春期に避け得ない、勉学を主題として、しかしなんとそのアカデミズムが心地よく見えてしまうことだろう。この作品を見ると単位を獲ち取ることすらが、ささやかな冒険の旅に思えてくる。
たとえその免状を紙ヒコーキにして飛ばしてしまおうとも、である。

ハートくん 勉強会
ペーパー・チェイス」THE PAPER CHASE(1973/112分/米Fox)
監督&脚本:ジェームズ・ブリッジス
撮影:ゴードン・ウィリス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ティモシー・ボトムズ、リンゼイ・ワグナー、ジョン・ハウスマン


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posted by 映画貴族ニャン at 21:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 青春>ペーパー・チェイス

「哀愁」
●恋愛の元素をちりばめた永遠のロマンス!

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ヴィヴィアン・リーと言えばスカーレット・オハラ役が、生涯を支配したくらいの当たり役なわけですが、実はその、いかにも華奢な肉体と、ナイーヴ、センシブルな肉体の肌合いからすると、このマイラ・レスターはいかにもヴィヴィアンの肉体に即していて、また忘れることのできない畢生の適役と言えるでしょう。

哀愁33.jpg現代のような制約の甘い時代に生きていますと、ロマンスもまたエネルギーを失うわけで、ここに描かれる哀切きわまりない状況こそ、恋愛の元素だと改めて気付かされるのです。。
戦時という制約がすべてを支配したその時代を存分に生かして、これ以上のロマンスの造形は無理、と思えるほどです。
そして、永遠の愛とは、片方の死が形成するものであることも、同じように気づいてしまいます。

哀愁26.jpgそれにしても、かほどの哀しみをたたえた“蛍の光”を聴くことは、そうはないものです。ヴィヴィアンのはかなげな存在の美しさの背景音楽として、このよく知られ過ぎたメロディが耳から離れず、若くして逝くヒロイン/マイラのテーマとさえ思えてしまうほどです。
ロバート・テーラーも先に西部劇を多く見てしまうと、イメージも狂うのですが、本来はこの作品やガルボとの「椿姫」('37)などがその出自なのであるでしょう。アクション活劇ではむしろ汚れ役ということになって、この端然とした役柄にこそ、この男優の在るべき優位性を感じざるを得ません。

哀愁35.jpgその美男美女による恋愛の道筋にまことに無駄がないのです。ウォタールー橋での馴れ初めから、教会に結婚を目指して出かけて、戦時の午後の結婚は法律が許さないという最初の壁、翌日早朝出直すつもりのふたりに追い打ちをかけるようにロイの出征、叩き込むように巧い。
バレエ劇団の意地悪ばあさんも、同居の親友も、戦死を知らされる新聞を目にした後のロイの母親との対面、申し分のない展開で、余分な説明のないのがいっそう心地良さを高めます。

この呼吸、このテンポ、もうワザを感じさせないほどの自然な流れ、美男美女に後光が射すような照明の魅惑、そのモノクロームの質実な映像を眺めていると、昭和元禄から殺伐平成の息苦しさをかえって感じてしまうほどです。

同じこの素材を今にアレンジすれば、これほどの夢想にまで決して歩み寄れないだろうと、天を仰ぎたいくらいのものです。
映画が完璧な夢想の土壌であったその時代の、これは美し過ぎる遺産です。

監督をしたマーヴィン・ルロイにはこの作品のほかに、グリア・ガースンとの「心の旅路」('42)「キュリー夫人」('43)があります。
いわば絶頂期の3本と、筆者は思っています。誇りと夢に充ちた3本というわけです。いずれもカメラはジョセフ・ルッテンバーグ、見事な仕上がりです。
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哀愁」WATERLOO BRIDGE(1940/108分/米)
監督:マーヴィン・ルロイ
脚本:S・N・バーマン&ハンス・ラモウ&ジョージ・フローシェル
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:ハーバート・ストサート
出演:ヴィヴィアン・リー、ロバート・テーラー、マリア・オースベンスカヤ
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posted by 映画貴族ニャン at 12:24 | Comment(0) | TrackBack(1) | 恋愛>哀愁

「ディアボロス/悪魔の扉」
●人間も、悪魔も、好きなものは、なあんだ?

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フロリダで活躍中の無敗の少壮弁護士が、ニューヨークの摩天楼さえ見下ろす法律事務所にスカウトされます。その頭領がアル・パチーノ、その少壮弁護士がキアヌ・リーヴス、その妻がシャーリーズ・セロン。
なんといってもこの映画の芯はアル・パチーノです。「ゴッドファーザー」(1972)で、若手俳優だったアル・パチーノが25年を経て、ちょうどマーロン・ブランドみたいなしゃがれ声と貫禄で、昔だったら自分自身の役どころだったに違いないキアヌ・リーヴスに相対します。

アル・パチーノのキャリアを見てきた方にとってはまず、そんな余裕と芸域を愉しんでいるかのようなアル・パチーノが目に留まります。まさにB級映画的ノリのメイクと演じっぷりが、あくどい面白さとでもいいましょうか。
ゴッドファーザー」のとき32歳、この映画のときは57歳というわけですね。

キアヌが33歳ですから‥‥そうした類推も、映画を愉しむ要素になります。
ディアボロス/悪魔の扉4.jpgそして、このイカシてる子誰? と筆者にとってこのときが発見の、初めてのシャーリーズは、久々の曇りなき美人女優、こいつはイケるわいとすぐ好きになり、その冒頭から颯爽と元気でやんちゃそうな女性を演ずる風情で出てきます。4年後、「スウィート・ノーベンバー」(2001)でキアヌと再共演するのですが、時が流れるなかで、彼らそれぞれの役者としての立脚点が3者3様、それ自体が楽しめる映画です。

アル・パチーノが実は悪魔で、それを先に知るのが妻であるシャーリーズというわけで、その明るい曇りなき美人が、どんどん傷つき暗く、沈みがちに落ち込んでゆく様が、またシャーリーズに引き寄せられた理由といってもいいでしょう。
ディアボロス/悪魔の扉9.jpgヘアスタイルから服装からメイクから表情から、どんどん変貌してこれ同じ人?ふたりの女優が、健康と病気をそれぞれ演じているんじゃない?そのくらいのメリハリがあります。そのアンビバレンツな魅力のアラベスク。シャーリーズ・セロン、注目、いまや伝説の初期の代表作ともいえます。

法律事務所をドラマの軸にしているシリアス・ドラマはたくさんありますが、この映画のように、オカルトがらみでコケ脅かしに終わらず、それなりの面白さを保っている映画はあまり記憶しません。
監督のテイラー・ハックフォードは、テレビ時代にエミー賞を2度受賞、映画の2作目が「愛と青春の旅立ち」、これが筆者には最高作と感じます。作品の半分くらいは自らプロデュースも兼ねるケースが多いようですが、商業ベースできっちりした仕事をこなすタイプのようです。奥さんがキャリアの永い女優ヘレン・ミレン。

さて映画の終章で、無敗の少壮弁護士は自ら弁護を降りて、初めて敗北を喫します。弁護するに値しない被疑者だったわけですが、追いすがる記者たちを尻目にすがすがしい敗北感? を胸に立ち去るのですが、その記者の顔が悪魔のアル・パチーノになり、
「悪魔が一番好むものは?」というようなことを言うんです。

何だと思います。弁護するに値しない被疑者でも弁護して勝利してきた弁護士の、教訓ですね。すべては栄達のための犠牲、それを、妻を失って初めて気づくのです。
悪魔が一番好むものは、<虚栄>なんですね。私も、あなたも、気をつけましょう。

<虚栄>よりシャーリーズ・セロンを選ぼう! 二役と見まがう変貌をご覧あれ! しかしこのときその美貌に気を取られ、180cmを超すタッパの女丈夫とはすっかり見落としていました。キアヌよりよく見ると大きい。なかなかのものです。

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ディアボロス/悪魔の扉」THE DEVIL’S ADVOCATE(1997/144分/米)
監督: テイラー・ハックフォード 
脚本: ジョナサン・レムキン&トニー・ギムロイ
撮影: アンジェイ・バートコウィアク 
音楽: ジェイムズ・ニュートン・ハワード
出演: アル・パチーノ、キアヌ・リーヴス、シャーリズ・セロン
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posted by 映画貴族ニャン at 16:51 | Comment(0) | TrackBack(1) | サスペンス>ディアボロス/悪魔の扉
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