「離愁」
●戦時のつかの間の愛を、至高の領域にまで高めた映画の魔法!

離愁 離愁2
日本にはその多くが公開されずにいるが、ジョルジュ・シムノン原作を中心に映画化し続けたピエール・グラニエ=ドフェール、まこと渋いが知る人ぞ知る名匠なのではある。'90年代以降はメグレ警視シリーズをTVMで撮り続けたようだが、昨年11月惜しくも没し、享年80歳。

その名品中の名品がこの「離愁」('73)。ロミー・シュナイダーにとってもはずせない、ノートを観ると'75年公開時のベストワンとしている。久しぶりにその愛惜あたわざるこの至高の恋愛ドラマを再見してその印象を新たにした。

離愁4モノクロからカラーへ、カラーからモノクロへ、大戦の実写と思しきフィルムも交えて、ここに点綴されるのは、寡黙にして万感胸迫るラストシーンに至る、戦時の、つかのまにしか過ぎないその想いが、邪悪なナチスの現実さえ凌駕して、ことばさえも失いながらも高まりゆくただひとつの真実への燃焼。

実にわびしき疎開列車で隣り合わせた男と女の、或る意味ではやむなき交情が、徐々に逼迫した状況を重ねてゆき、それはさらに戦後生活にも影を落とす。女スパイの疑いをかけられている女を知っているか否かの詰問に、互いに知らぬ顔を通そうとしたかにも見えるその互いが、ひとたび視線を交わした時にはもう後戻りできぬ、押し寄せる万感の激情。

離愁24.jpg男が頬に手をやり、またその手をいつくしむように迎える女の顔に、いっさいの世俗を超える瞬間が訪れる。男と女のその後を説明も描きもしない映画は、そこに至高の愛を刻印して去るのである。
低く抑えながら耳に余韻を残していく背景音や音の調べ、空爆される列車と、そこに厳然と到来する死の苛酷。

ひっつめの髪さえ鮮やかに見えるロミー・シュナイダーの、寄る辺なきユダヤ女の孤絶の表情、微笑むとも知れぬかそけき微笑、耐えに耐えるその万感が、語るべき映画のすべてを語る。
あゝ、これが映画の至福というべきである。

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離愁」LE TRAIN(1973/103分/仏伊)
監督:ピエール・グラニエ=ドフェール
脚本:  〃   &パスカル・ジャルダン
撮影:ワルター・ウォティッツ
音楽:フィリップ・サルド
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ロミー・シュナイダー、アンヌ・ヴィアゼムスキー


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posted by 映画貴族ニャン at 17:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛>離愁
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