「荒野の決闘」
●西部劇で書かれた抒情詩にして生活詩

マイ・ダーリング・クレメンタイン 
日本の巨匠、木下恵介も黒澤明も一番好きな映画監督として名前を挙げたジョン・フォード。そのジョン・フォードも遠くなりにけりですが、その原因の最大は西部劇がはるか遠く製作されることがなくなったからです。
しかし西部劇は忘れ去られてほしくない名作を奔出しています。その第一人者がジョン・フォード、そしてその最高作といっていいのが「荒野の決闘」('46)なのです。

ヘンリー・フォンダ西部劇を多く見る機会の無くなった方に「荒野の決闘」の、他の西部劇との大いなる違いに気づいてもらうのはなかなか至難と言えるのですが、簡単に言うと西部劇は多く活劇であるのですが、これは抒情詩、生活詩の一面が色濃く素晴らしいところ、と言っていいのです。

体裁こそ西部劇で史実を借りてもいますが、フォード映画の中で、動のジョン・ウェインにくらべて静のヘンリー・フォンダと言われたその静謐で寡黙な紳士像としてのワイアット・アープ、まさしくジョン・フォードが造型したワイアット・アープ、ヘンリー・フォンダが造型したワイアット・アープ、この以前にも以後にもこれ以上のものはないと言っていいワイアット・アープが見られることです。

荒野の決闘髭を剃りシェイクスピアを語りダンスに興ずる、ガンマンとして以上に生活感に満ちたワイアット・アープ、クラントン一家との対決の最後の活劇シーンすらが、静かで豊かな余情を感じさせます。

そしてその男の原像に対するに、ジョン・フォードの描く女性、肯定する女性はただひとつの類型と言っていいのですが、そのまた原像といっていいのがキャシー・ダウンズ演ずるところのクレメンタインです。その対比としてのヴァンプ=リンダ・ダーネルもいます。
ワイアット・アープとドク・ホリディしかも男同士の友情なり男の在りようを描いてきたジョン・フォードがここでもドク・ホリディとアープとの関係性で寡黙に語るところのものが優れて男の世界の原像とも呼べるのです。

実に多くの西部劇をいつも水準以上に仕上げたジョン・フォードですが、そこにはモニュメント・ヴァレーに代表される詩情が風物詩としての西部劇を定着させてきました。その中でもことに生活人としてのワイアット・アープの側面を、それとなく点綴したところがいつまでも忘れられない滋味を感じさせる作品の魅惑です。
この風景の中での、フォンダのエレガンス・ウォークと言われたその歩幅がまたさらに魅力なのです。
アープとクレメンタイン 荒野の決闘2
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荒野の決闘」(MY DARLING CLEMENTINE 1946/97分/米)
監督:ジョン・フォード
脚本:サミュエル・G・エンゲル&ウィンストン・ミラー
撮影:ジョー・マクドナルド
音楽:シリル・モックリッジ&アルフレッド・ニューマン
出演:ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュア、キャシー・ダウンズ、リンダ・ダーネル、ウォルター・ブレナン、ワード・ポンド

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posted by 映画貴族ニャン at 17:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 西部劇>荒野の決闘
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