「薔薇の名前」
●いまこそ観るいつまでも新しい、現代の黙示録!

薔薇の名前 薔薇の名前2
 
舞台は重く暗鬱な雲に満たされた中世北イタリアの僧院――。
そこに次々と繰り返される惨劇。
しかもその僧院の中にうごめくのは異端か正統か、それすら不分明な、異様異形にしか見えない僧たちの群れ。
なによりその背景のおどろおどろしさが際立つ「薔薇の名前」です。

そんな舞台装置にやって来るのがこの頃既に56歳、007スターから脱却して芸域を拡げつつあったショーン・コネリー扮する修道士ウィリアムと「トゥルー・ロマンス」(本ブログ記載)主演のクリスチャン・スレイター扮する見習い修道士アドソ。スレイターはまさに別人の趣です。

彼らの使命はおりしも激しく対立する僧院内部の権力抗争、その実態を把握せんとやって来たとも言えますが、次々と起こる思わぬ惨劇と、自らも襲う危難に、事件の調査がなによりも緊急の課題となっていきます。
宗教戦争がひとつの僧院内で激しく争闘し、生命の危険さえ帯びた中をいかにも強靭な意志力が感じられるショーン・コネリーが探索することで、興趣はいやがうえにも高まります。

そしてこのウィリアムが過去に異端審問官であったこと、そこへ新たにやってくる異端審問官ベルナール・ギーとは過去に大きな確執があったことがアドソとの会話からも知らされていきます。
薔薇の名前4ベルナール・ギーを演じるのは「アマデウス」('84)でサリエリに扮したF・マーレイ・エイブラハム、やはりの迫力です。

教会派VS皇帝派という宗教戦争の図式を超えて人間臭い対立軸の重構造になっていくのも映画の見事な説得力です。
原作に拘泥しすぎると、2時間余りの長さでその隅々が描きこまれていないと感じるのは当然なのですが、おのずから小説と映画の機能の特性は異なるものですから、言葉の生み出すものをこの映画に多く期待してもそれは無いものねだりに過ぎないでしょう。

むしろ刈り込まれた果てに浮かび上がってくるもの、原作を読んでいない方がオリジナルな発見や歓びを得るところにこそ、映画化の成否があるのではないかと思います。

書物そのもの、ことにギリシャ語で書かれたアリストテレスの「詩学」の或るパートがキイワードとなり、事件の背景となっているこの映画の場合、その刈り込みの脚色者たちの成果は出色のものといっていい、と感じられる映画です。薔薇の名前5
謎の秘められた迷宮のような僧院の書庫を探索する顛末までの運びは異形のものたちが存分に跋扈して、スリリングな面白さがありますし、それは充分に映画的な楽しみでもあるわけです。

それにしてもこの原作あってこそという、原作との往還は随所にあって、「笑いは猿のすることだ」「猿は笑いません。人間だけが笑うのです」
「純粋さというものはいつも私に恐怖を覚えさせる」
「何があなたに恐怖を抱かせるのですか?」
「性急な点だ」

そして、なによりも全編を覆うくらいのテーゼと言える、
「悪魔は物質界に君臨するものではない。悪魔は精神の倨傲である」は、
しっかり映画の内面に響き渡っているのです。

昨今のあれこれの事件のことじゃないかと思えるくらい、いま見直しても映画はきわめて現代的な風貌を持っています。
暗雲立ち込めるこれからの梅雨時、しばし暗鬱な世界に沈潜して、人間の織り成す世界の構造に身を馳せてみるのも一興ではないでしょうか。身を引き締めるスリラーであります。

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薔薇の名前3
薔薇の名前」LE NOM DE LAROSE(1986/132分/仏・伊・西独)
監督:ジャン=ジャック・アノー
脚本:ジェラール・ブラッシュ&ハワード・フランクリン&アンドリュー・バーキン&アラン・ゴダール
撮影:トニーノ・デリ・コリ
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:ショーン・コネリー、F・マーレイ・エイブラハム、クリスチャン・スレイター、エリヤ・バスキン
Copyright (C) 2007 Ryo Izaki,All rights reserved.

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posted by 映画貴族ニャン at 08:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス>薔薇の名前
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