「哀愁」
●恋愛の元素をちりばめた永遠のロマンス!

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ヴィヴィアン・リーと言えばスカーレット・オハラ役が、生涯を支配したくらいの当たり役なわけですが、実はその、いかにも華奢な肉体と、ナイーヴ、センシブルな肉体の肌合いからすると、このマイラ・レスターはいかにもヴィヴィアンの肉体に即していて、また忘れることのできない畢生の適役と言えるでしょう。

哀愁33.jpg現代のような制約の甘い時代に生きていますと、ロマンスもまたエネルギーを失うわけで、ここに描かれる哀切きわまりない状況こそ、恋愛の元素だと改めて気付かされるのです。。
戦時という制約がすべてを支配したその時代を存分に生かして、これ以上のロマンスの造形は無理、と思えるほどです。
そして、永遠の愛とは、片方の死が形成するものであることも、同じように気づいてしまいます。

哀愁26.jpgそれにしても、かほどの哀しみをたたえた“蛍の光”を聴くことは、そうはないものです。ヴィヴィアンのはかなげな存在の美しさの背景音楽として、このよく知られ過ぎたメロディが耳から離れず、若くして逝くヒロイン/マイラのテーマとさえ思えてしまうほどです。
ロバート・テーラーも先に西部劇を多く見てしまうと、イメージも狂うのですが、本来はこの作品やガルボとの「椿姫」('37)などがその出自なのであるでしょう。アクション活劇ではむしろ汚れ役ということになって、この端然とした役柄にこそ、この男優の在るべき優位性を感じざるを得ません。

哀愁35.jpgその美男美女による恋愛の道筋にまことに無駄がないのです。ウォタールー橋での馴れ初めから、教会に結婚を目指して出かけて、戦時の午後の結婚は法律が許さないという最初の壁、翌日早朝出直すつもりのふたりに追い打ちをかけるようにロイの出征、叩き込むように巧い。
バレエ劇団の意地悪ばあさんも、同居の親友も、戦死を知らされる新聞を目にした後のロイの母親との対面、申し分のない展開で、余分な説明のないのがいっそう心地良さを高めます。

この呼吸、このテンポ、もうワザを感じさせないほどの自然な流れ、美男美女に後光が射すような照明の魅惑、そのモノクロームの質実な映像を眺めていると、昭和元禄から殺伐平成の息苦しさをかえって感じてしまうほどです。

同じこの素材を今にアレンジすれば、これほどの夢想にまで決して歩み寄れないだろうと、天を仰ぎたいくらいのものです。
映画が完璧な夢想の土壌であったその時代の、これは美し過ぎる遺産です。

監督をしたマーヴィン・ルロイにはこの作品のほかに、グリア・ガースンとの「心の旅路」('42)「キュリー夫人」('43)があります。
いわば絶頂期の3本と、筆者は思っています。誇りと夢に充ちた3本というわけです。いずれもカメラはジョセフ・ルッテンバーグ、見事な仕上がりです。
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哀愁」WATERLOO BRIDGE(1940/108分/米)
監督:マーヴィン・ルロイ
脚本:S・N・バーマン&ハンス・ラモウ&ジョージ・フローシェル
撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ
音楽:ハーバート・ストサート
出演:ヴィヴィアン・リー、ロバート・テーラー、マリア・オースベンスカヤ
Copyright (C) 2008 Ryo Izaki,All rights reserved.

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posted by 映画貴族ニャン at 12:24 | Comment(0) | TrackBack(1) | 恋愛>哀愁
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Q33
Excerpt: 英語のタイトル(原題)は “Waterloo Bridge”(ウォータールー橋) 中国語のタイトルが “魂斷藍橋” (hun duan lan qiao  魂を断ち切る..
Weblog: 英語+中国語etc.で楽しく脳内活性化!映画オリジナル・タイトルQ&A
Tracked: 2008-03-02 17:53
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