「運命の女」
●火遊びは人生の深き淵の入口、火遊びする!しない?

運命の女 運命の女2

それにしてもひどい題名だ。この題名を内容に即したものにすることと、同じエイドリアン・ライン監督作品「危険な情事」('87)や「幸福の条件」('93)のときのキャンペーンの10分の1でもやっておれば興行ももう少しましな結果になったかと悔やまれます。作品の力は存分ですからまずタイトル、これがいけない。「運命の女」。

原題はUNFAITHFUL。この方が内容を暗示しています。
<不安定>というような意味でしょうが、ニュアンスとしてはFAITHFULに軸を置きながらのUNでしょう。作品はヒロイン夫婦の状況をさしてのUNFAITHFULですから、日本題名・運命の女・では不倫相手を軸にして考えないと出てこない題名です。主題そのものを失っています。
ラストシーンからすれば<岐路>でもいいでしょう。
製作陣が意図しない題名をつけているのが、悪題の指摘の理由です。

冒頭、このテクニシャン監督、嵐のような突風を出現させます。
時々やり過ぎる人なのでまた始まったか、と一瞬危惧を持ちましたが、徐々にその力量のほどをジワリと見せてくれて安心いたします。
映画はほぼ3人だけがドラマの基軸となっています。リチャード・ギア、ダイアン・レイン、そしてオリヴィエ・マルティネス。ほぼ3人だけがドラマの核となる映画には名作が多いですね。「突然炎のごとく」('61)がそうですし、日本では「大悪党」('68)がすぐさま浮かびます。この作品はトライアングル・ラブでもありませんし、ヤクザも出てきませんが、共通するのはサスペンスです。

「突然炎のごとく」はたおやかなサスペンス、「大悪党」はハラハラドキドキのサスペンス。そして「運命の女」はズシリと胸に落ちる心理サスペンスです。
夫婦の片方が浮気をして発覚し、それがドロドロの結末になる、話を書けば
三文小説です。ところがぜひこの映画の細部をお楽しみください。
これほど心理描写をさまざまな背景や小道具やシチュエーションで、巧緻に
展開して見せる映画は近頃でも群を抜いています。心理描写だけは文学に負けると言われたことも多いんですが、この心理サスペンスの臨場感はなまなかではありません。3人の役者がこれまたそれぞれのパートをきっちり果たしていて遜色ありません。

冒頭の嵐は突風となるべき夫婦の危機の予感でもありますが、どんな満ち足りた生活にも隙間風はあるもので、平穏だけで人は生きていけるものでもありません。火遊びといえば、結果としてひとは非難もしますが、火遊びだから充実もし、区切られた時間の燃焼度も高いのです。
誰がこのヒロインを攻められるでしょう。……夫を除いて。

ダイアン・レインも綺麗どころであるだけの役柄で低迷した時期もありましたが、これは代表作といっていい成果です。同時代をあれこれの経過をたどりながら、こんな成果に遭遇するというのもわがことのように嬉しいものです。
うっすらとした皺さえがそのキャリアの勲章のように見えます。
偶然が必然に変わっていく物事のありようを、映画という機能を駆使して、これほど見事に背景である調度にすらものを言わせ、自然な説得力を持って
迫ってくる映画、そうはありません。

題名でも世評でもだいぶ損をしている作品です。恋愛映画としても、恋愛の成立の行くたてを見事に描いていますし、恋愛が人生に絡むある種の苦さも見事にフィーチュアしています。
脚本がしっかりしている映画は疑問を挟む余地がなくなるんですね。
見逃してしまった方は、殺人までは行かないまでもこの事件のてんまつ、深く胸に迫るでしょう。火遊びの心得がいささかでもある方なら!
とくとご覧あれ!

運命の女3 運命の女4

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運命の女」UNFAITHFUL(2002/124分/米・FOX)
製作:エイドリアン・ライン&G・マック・ブラウン
監督:エイドリアン・ライン
脚本:アルヴィン・サージェント&ウィリアム・ブロイルズJr.
撮影:ピーター・ビジウ
音楽:ジャン・A・P・カズマレック
出演:リチャード・ギア ダイアン・レイン オリヴィエ・マルティネス

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posted by 映画貴族ニャン at 10:46 | Comment(1) | TrackBack(0) | サスペンス>運命の女
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