「ジョー・ブラックをよろしく」
●燦燦と降りそそぐ花火のなかに照射される、人生という時間の重み!

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ブラピのアイドル映画の向きでイメエジが定着しているかもしれない。
公開時は筆者もそのイメエジだった。
ところがである。見事な拾い物。これが珠玉の美しい作品で、眼を洗うばかりの映像と、さまざまな視野を展開してくれる、奥行きの深い作品なのである。ブラピを見るだけの映画で見てしまうと、落し物をするようなものである。
そう、文字通り「ジョーブラックをよろしく」をよろしく!
青春映画のジャンルでもいいのだけれども、あえて「人生」のジャンルとしたのも、人生を見る視野がこんな風でありたいと思うからである。

マーティン・ブレストという監督はきわめて寡作で未輸入の「お達者コメディ/シルバーキング」という評判作があり、「ビバリー・ヒルズ・コップ」「ミッドナイト・ラン」「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」と続いて、この作品があり、そのあと「ジーリ」(2003)という作品があるがラジー賞5部門受賞のせいか輸入されず、WOWOWで放映もされたようだが未見、ほぼ四半世紀に6作品、忙しい現代では忘れられがちになる監督ではあるだろう。

しかし、この映画を見ると、腕は実に確かだ。
素材もややひねって死神が取りついたような話で、陰惨な暗いホラーにでもなるかと思いきや、死神を触媒として見えてくる人生の逸話、ある種はかない人の命を照射しながら見えてくる人生の真実を、意外に楽しくもほろ苦いなかに浮かび上がらせる逸品なのである。
物語の核となるのは、ご存知アンソニー・ホプキンスの演じる死期間近い富豪ウィリアム・パリッシュが、死神(ブラッド・ピット)と取引をするところから始まり、娘スーザン(クレア・フォーラニ)と青春の出会いをする青年(ブラッド・ピット二役)と、その青年の事故死、青年に成りすます死神という展開で進むのだが、その奇妙なお話が徐々に寓意を持っていのちの不思議、時間の哀切さを、端正な語り口で浮かび上がらせる。

開巻しばらく後、ヘリにおいて、父親が娘に言う、こんなセリフがある。
主題の提示部分でもある。
「彼を語る言葉に何の情熱もない。小鳥のさえずりほどもね。足が地に着かぬ想い。我知らず歌い踊る気持ちはどこに?眼もくらむ恋の興奮は? 恋は情熱だ。相手なしでは生きられない。‥‥という想い。無我夢中で互いにのめりこんでいく。頭じゃない。ハートの声を聞くんだ。その声が聞こえるか。その経験のない人生など‥‥恋を知らない人生は‥‥意味がない。その努力をすることが、生きることだ」
滔々と語る父親に
「ブラボー!」と娘が囃す。
「からかうな」
「ごめんなさい。要約して言って」
「心をオープンに! いつか稲妻に打たれる」

死神をどういう位置づけで動かすかに、おそらく4人のライターは腐心したに違いない。
その腐心が見事な回心となって、一挙に大団円に向かうシナリオの巧みにも動かされる。カメラは実に静かに淡々と人生の終幕である“死”をかたわらに携えながら、むしろ“生”の充溢のありようをほのかに点描させて、キワモノ的なおとぎ話をヴィヴィッドな現代の寓話に仕立て上げている。

こういう拾い物をしたあとは実にうきうきと楽しい。映画を発見する旅の途上の一里塚、はるかに遠望される記念碑的風景とめぐり逢えたような歓びである。
これほどの作品をブラピを売るだけではもったいない。
もちろんブラッド・ピットもセンシブルでいいし、アンソニー・ホプキンスも映画を見事に締めている。娘役のクレア・フォーラニが役柄にピタリとはまったルックスで掌(たなごころ)で慈しむような慎重な演技で、ヒロインの哀切を浮き立たせる風情にも見惚れる。

娘の青春と、死を間近にした父親とが、互いに乱反射するごとく、限りあるいのちの炎を慈しむ。
燦燦と降りそそぐ花火のなかに消えていく若いふたりの映像が、長く余韻となって、その哀切感をいや増すのである。

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ジョー・ブラックをよろしく」MEET JOE BLACK(1998/178分/米Uni)
監督:マーティン・ブレスト
製作:マーティン・ブレスト
脚本:ロン・オズボーン&ジェフ・レノ&ケヴィン・ウェイド&ボー・ゴールドマン
撮影:エマニュエル・ルベスキ
音楽:トーマス・ニューマン
出演:ブラッド・ピット、アンソニー・ホプキンス、クレア・フォーラニ

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posted by 映画貴族ニャン at 12:04 | Comment(2) | TrackBack(2) | 人生>ジョー・ブラックをよろしく
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