「幸福」
●豊穣で典雅な自然の中に静かに見出される、莞爾たる不条理!


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いまは無きアートシアターの上映で「5時から7時までのクレオ」('61)を見て以来、アニエス・ヴァルダは、もっとも信頼に充ちた女流監督だった。
作品数こそ少ないけれど、いま振り返ってもこのとき既に自らのスタイルやそのタッチをほとんど確立していたことに驚く。

しかも第2作目がこの典雅にして悠然たる「幸福」('64)なのだから、驚きを通り越して崇敬の念を抱かざるを得なかったのも不思議ではない。
ヌウヴェル・ヴァーグたちの中で年長というばかりではなく、その作風そのものが大いにその魁となり、ヌウヴェル・ヴァーグの母とも祖母とも言われるのは、この作品がさらにヌウヴェル・ヴァーグたちの精神的な父であるジャン・ルノワールの、その光背を受けているから、さらに如実に明確なのである。

なんという、寸分狂いのない美しい映像だろう。しかも少しも饒舌ではない。ひそやかにモーツァルトのクラリネット五重奏曲が世の至福を集めるが如く、鳴り響く。ほとんどドラマらしきドラマもない。
ただ、妻の自死がなによりも自然な形で投げ出されているだけである。
そう、自然とはもっとも不条理な存在なのだから!

そんな哲学さえ浮き出てくるほどの、寡黙でありながら、いつも充溢する生命の讃歌も内にたたえられているアニエス・ヴァルダの作品たち。

若き幸福な夫婦とふたりの幼き子供、その夫がもうひとつ幸福が増えて、妻にも理解を求める。幸福は何も変わらない。第一、増えただけなのだから。
夫を非難するのは易しい。この画面に非難はない。
森の中を散策する、夫婦とふたりの幼き子供は、相変わらずたおやかな自然に包まれ、美しくそよいでいる。妻が変わっただけなのだ。

さかしらな巧緻を感じさせない巧み。時間が明らかに流れていることを豊穣なほど感じさせる映像の甘美。LPを買い込んで、幾度このクラリネット五重奏曲を聴き直したことだろう。
そこに在るのはいのち――生命の在り処だけが、まさしくヴァルダがいつも確かな手ごたえで指し示してきたものだった。

マリー・フランス・ピジェはオムニバス「二十歳の恋」('62)フランス篇トリュフォー作品にもその美貌を飾った。因みに日本篇は石原慎太郎監督作品。

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幸福」Le Bonheur(1964/80分/仏)
監督:アニエス・ヴァルダ
製作:マグ・ボダール
脚本:アニエス・ヴァルダ
撮影:ジャン・ラビエ&クロード・ボーゾレーユ
音楽:ジャン・ミシェル・デュファイ
出演:ジャン・クロード・ドルオー、クレール・ドルオー、マリー・フランス・ピジェ

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タグ:不条理 幸福
posted by 映画貴族ニャン at 08:31 | Comment(3) | TrackBack(2) | 人生>幸福
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