「モンパルナスの灯」
●薄幸の生涯でも、寄り添う女性たちが優しい!

見交わしながらの双方の似顔絵 見交わし合いながらの似顔絵

画家や音楽家を素材にした伝記映画は、ジャンルを構成するくらい実に多くの作品があります。
ピカソとゴッホは映画化率の高い両巨頭と言えるでしょう。
この「モンパルナスの灯」('58)のモジリアニはその点あまり映画になることはありませんが、この作品がありますから、充分です。そう言えるくらい、地味ではありますが、しみじみしたあじわいがあります。


35歳で早世したモジリアニには、36歳で早世したジェラール・フィリップが演じています。実に亡くなる一年前の映画、35歳というわけです。
そう思ってみますと、映画の中の死も鬼気迫る辛さが倍化します。

画商モレル2それには、巻頭からじっとモジリアニを怜悧な視線で観察し、全編の通奏低音のように存在するリノ・ヴァンチュラの画商モレルが、大いに悪魔的な位置を占めます。
ですからこれは暗く、辛い映画の一面があります。

しかもひたひたと押し寄せる運命の足音の如き音楽が耳を離れません。モジリアニはこのとき既に30代ですが、まだ青春期の葛藤のさなかに在ったと見えなくもありません。二度と繰り返せはしないその時間の重さをひきずっていたような気もします。


そのくらい、出口のないときを救っているのが、登場する女性たちのモジリアニに対する、何故に、過ほどに優しいのかと思えるばかりの慈しみです。
年上の女性であるだろうベアトリスに扮したりリー・パルマーはこの頃、国際的に評価も活躍もありましたドイツ女優で、このとき44歳とは信じられない溌剌、練達の芸を見せています。

ベアトリスカフェの女主人、そこのウェイトレス、或いは街角で久しぶりに出くわした女性、いずれもが包み込むようにモジリアニに優しい、ジェラール・フィリップだからそれが少しの不自然もなく、映画の救いに、映画の微笑みとなって、不幸、悲運の色合いをいささか変化させています。

もっとも悲しいのはアヌーク・エーメ扮するジャンヌ・エビュテルヌでしょう。この甲斐性なしの暴力夫を現代の女性のどれほどが許すでしょうか。
しかも映画では描かれていませんが、このラストシーンの、夫の死をまだ知らない彼女は、そのモジリアニの没後、2日して命を絶ちます。

アメデオ・モジリアニ(1884.7.12〜1920.1.24)
ジャンヌ・エビュテルヌ(1898.4.6〜1920.1.26)
ジェラール・フィリップ アヌーク・エーメ

そんなはかない人生を、よく見ると眼も顔立ちも大きいアヌーク・エーメがこの人以外ない、というくらいおぼろげな表情で演じています。
こういう女性がイイと申しますと、都合がいい女性がいいと思われるのがオチですが、控え目ではあっても自らの想いを貫く芯の強さの行くたてにはなかなかの共感を持ちます。

クロード・ルルーシュ「男と女」('66)と共に、アヌーク・エーメの代表作のひとつといっていいと思います。
モジリアニを描いた作品としても白眉といえますが、演じるジェラール・フィリップ自身にとっても自らが打ち立てた墓碑銘といえるほど、適役にして見事な臨場感があります。
   
リノ・ヴァンチュラ

モンパルナスの灯」LES AMANTS DE MONTPARNASSE(1958/108分/仏)
監督&脚本:ジャック・ベッケル      
撮影:クリスチャン・マトラ 音楽:ポール・ミスラキ       出演:ジェラール・フィリップ、アヌーク・エーメ、リノ・ヴァンチュラ、リリー・パルマー、ジェラール・セティ
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posted by 映画貴族ニャン at 09:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 青春>モンパルナスの灯
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